自選十首
牟礼ヶ岡惣林嶽赤崩剣の平霧湧きうごく山を涵して
凪ぎわたる錦江湾この海底に熱水噴出口ありて熱水噴くと
「天翔くるあれはかりがね」みまかりし雁帰月二十四日よ
山桜花咲く前の花の気が惣林嶽の崖に満つ
石蓴藻浅緑色の帯となりたゆたう春の重富浜曲
蟻の巣を殺す黄の粒ひとつずつ咥えて歩む蟻の子歩む
蜜を採る蜂の後脚は蕊のそと花に突っ張る角度をさがす
鶲の子来るを待つともなく待てり畑の小石を拾うなどして
電灯の紐引きて消す搬ばるる前夜に姑のしたるごとくに
里山を躍るごとくに霧のぼる夕立の雨過ぎし名残りに
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