八雁短歌会

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阿木津英歌集『草一葉』自選十首

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自選十首

 

あまやかにすでに世に亡きこゑ唄ふ夕窓とほく照り映えにつつ
雀鳴くこゑの光とかがよへりまなこを閉ぢて身に()れしむる
窓遠きあけぼののいろいづかたにわが老いはてて()り着くらむか
どつかりと尻据ゑて尾をひだりにす夜の引き明けの雲見る猫は
春寒の天のはたてのいづくにか(まち)(はふ)らるる夜ごと日ごとに
底ひより見あげて立てりうつすらとくれなゐ滲む空のおもてを
青瑠璃の(はね)を吹かれて葉のうへに張る脚ぢから 小さく生まる
窓ぎはに横たはりたり夏ぬるきかぜ触れて顔の凹凸を過ぐ
ガラス瓶寄せあつめゆく音きこゆ曇りに冷ゆる空のかなたに
一葉(ひとは)いのちみなぎらふ力ありそれぞれの影ほそく群れ立つ

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