八雁短歌会

やかり

角田純歌集『草の穂』自選十首

HOME会員の歌集歌書 > 角田純歌集『草の穂』自選十首

自選十首

 

寄りて見むあまた蕾のなかにしてくれなゐ昏き(つぶら)のひとつ
いひがたき生きのしづけさひと椀の汁にしづみし蔬菜(そさい)のいろは
そこに在る(もの)のこゑにし(したが)へと内なる神を見つめしひとは
あたたかな日差しなりけり若干(そこばく)の草の枯れ穂をかぐはしうして
ひとのかげゆきかふ道のへんろ坂しぐれは過ぎてくれなゐの花
明けていまだひかり乏しきうら庭の莿草(いらくさ)の葉を()らす糖雨
ひとゆきて人また来たり木がくれの朽葉のにほふ昼の暗道(くらみち)
いしみちの(さが)しき坂をのぼり来て芽吹きのまへの一樹に逢ひぬ
銀の匙ぎんのひかりに透りつつおのが(かげ)にぞ(しま)はれにけり
いましばし蒼くし湛ふ冬海のこのすなおかに逼るゆふばえ

Copyright c 2018 Yakari Tanka Kai. All rights reserved.