『聴歌残日抄』自選十首
骨拾ふ箸に肋骨挟みたり最後の息に動きしところ
何を見に来しやと死者の問ふ声す夕霧深く沈む収容所 アウシュビッツ
髪刈られ織られて布にされにけりいくたびも女貶めらるる
天井に彫り麗しきキリル文字またラテン文字駅の名記す ウズベキスタン
生れし子は地蔵菩薩の顔ながら欠伸すくしゃみすまた眉も寄す 孫
わがまへに弾む黄色の雨靴の脱げかかりては小さき踵
憲法第二十四条をプリントし生徒に配る授業開きに 高校家庭科男女共修
教材としたる貧窮問答歌農は藁しき直土に住む
裳裾ひく女人のごとくまひるまの朱雀大路の真中を歩む 平城宮跡
惑へるは思惟深まると思ふなり葉叢色濃き椿の樹下に
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