八雁短歌会

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勝島靖夫歌集『赤龍悲傷吟』 自選十首

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自選十首

 
香具山上空に天の川あり。わが手の(くぼ)に玉虫眠(ねぶ)
平家物語のごとし。花も心も科学も三十一文字も、ガザも
りうきうより来たりし娘子は雪の降る八坂の塔を口開けて見る
古井戸の底ひにたまりし歳月の産み出づる羽虫ら飛びあがりきぬ
尿するゆゑに吾あり冬山の雪を湯気立ちてうがつかそけさ
あつちからこつちへ来たりあつちへと気の向くままに春の減りゆく
佐美雄の靴へへばりつきたる赤土を(あれ)はもはがす溝の(へり)にて
ひろひたるヤマトタマムシの内臓は蟻にたかられてをり捨てつ
七十歳すぎて挿入されし「紅旗征戒非吾事」定家らしくて
空と山のその境目の遠く近く鳥の行きけりいにしへも現在(いま)

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