自選十首
海峡の向かうの島に灯が点りデスクの上を片付けはじむ
農学部へ進学したき女生徒の父母は八百屋の卸をすなり
本棚の端に本なき闇ありて静かに世界を拒みてゐたり
日盛りの街を過ぐれば真白なる扉に「会員制」とのみある
『靴修理専科』のカウンターの上に人を外れし一足置けり
音よりも疾く廻れる星の上のこのしづけさや須磨浦の海
鯛焼きを鬻ぎはじむる電器屋の硝子戸越しに鉄板は見ゆ
暗黒物質満てる銀河の端つこに餡かけそばを啜つてゐたり
向き合ひてかたみにマスクを着けたれば吾は生徒を短く叱る
ウェッブ宇宙望遠解像度増して見えたる星団に未だ見えざる星はあるべし
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