自選二十首
家持の詠みにし山の立山は朝の光りに迫りきたれり
蛍烏賊バケツ一杯汲み上げてペダルも軽き初夏の夕暮れ
亡き母の描きし自画像立てかけて暫し見入りぬ生家の居間に
ふきのとう枯葉を押して上がりたり酒の肴に渋みが旨い
亡き母の描きし自画像立てかけて暫し見入りぬ生家の居間に
光さすプールの水の影見つつ思いているは震災のこと
水面を力まかせの平手打ち飛沫を飛ばし泳ぐ子可愛ゆ
立て続けにヒット打たれて泣き出だし少年野球にタイムがかかる
封筒の真中ふくらむゆうパック土つく菊芋友より届く
浸りつつなかばまどろむ湯面に脚を動かす蚊が一つ浮く
身の節々疼くに耐えて憶良はも自ら哀しむ歌を詠みけり
萎れたる月下美人を眺めつつ老いはしずかに愁いをふやす
羊歯群にわが屈みこみ蕨採る木下闇よりウグイスの声
雪融けの小川の水を掬いあぐ此処で飲むかや山の鹿らも
天窓の空を見上げて背泳ぎす龍のかたちの雲したがえて
腕時計付けて湯船に入ると知る孫のいたずら叱りし後に
干からぶる蚯蚓が動くと見てわれの屈めば蟻の群うごめけり
朝食後鏡の中の顏に問う「洗面するのは二度目でないか」
天井に届かんばかりに伸びてゆくパキラお前の青春を跳べ
小寒は七福神をお詣りす寿老人様には賽銭多めに
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